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なぜ今サポートエンジニアが熱いか
2019-12-05 05:00:00 -0800
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Support Explained

こんにちは、マイクロソフトの石井 哲平です。 2007年に新卒でマイクロソフトのサポートエンジニアとして入社をし、長らくエンジニアを楽しんで来ました。 2018 年より、サポートエンジニアのチームでマネージャー職をしています。

サポートエンジニアという職業に魅力を感じ、都度サポートエンジニアであることを選び続けてきたという自負はありますが、あらためて、マネージャーという職について、その価値の言語化が必要だと感じた次第です。 サポートエンジニアって何?という方に知ってもらいたい。 あるいは、今サポートエンジニアだよという方、自信を持ちましょう! そういう気持ちを込めて書いていきます。

極力一般化して書きたい部分ではありますが、経験上、部分部分でマイクロソフトに言及する点はあらかじめご了承ください。

サポートエンジニアの仕事とは

技術職です。IT (ソフトウェア、ハードウェア) 関連の技術を持って、お客様のお困りごとを解決するというサポートです。

私の5歳の子供には、「コンピューターのお医者さんだよ」と伝えています。医者や弁護士に負けないぐらい、日々専門知識を研鑽し、社会に役立つという側面では合っていると思います。

プログラマーやSIerさんとの違いは、トラブルシュートに重きが置かれている点でしょう。担当製品によってソースコードを読む・ネットワークパケットを分析する・デバッグをするといったことはありますが、プログラミングをすることが主業務ではありません。顧客と直接の電話・メール、あるいはチャット等を駆使して、問題点をヒアリング、到達目標を交渉します。このソフトスキルも重要となる点が大きな違いです。

コールセンターとの違いは、ある範囲の製品群・機能群にオーナーシップを持ち、調査と回答の責任を有するということです。企業によって、「初動をとり簡単な案件を対応するフロント・難しい案件の詳細調査を行うバックエンド」の分類がある場合があります。(マイクロソフトではこの分類はほぼ存在しません。) また、クレームを聞くだけ、というケースも非常に少ないです。技術力があること、そして会社の中でも製品へのフィードバックが出来る部署であるが故、技術的なソリューションや、今後の製品としてのロードマップなど、何らしか未来に繋げることが出来ることが多いためです。

私の主観が入ってしまいますが、様々にある仕事の中で、「目の前のお客様を助けてあげたい、そのために何ができるだろう」ということだけに真剣になれるということがとても響きます。お給料以外のところで、自分の社会的な価値が実感できる部分です。「何千万円の商談」「何百人の聴衆の前でプレゼン」といった派手さはなく、あくまで1人1人のお客様と向き合っての地道なやりとりですが、確かに「必要とされ、時に感謝していただける」という温度感がわかるものでした。

なぜ今サポートが熱いか

皆さん、Youtubeを見ますか?広告が出ますが、そのときにどのように感じるでしょうか。中には面白いものがあって、うっかり全部見てしまうようなこともあるでしょう。一方で、いかなる内容であれ、実際に見たいコンテンツではないものが強制的に表示され、時間が奪われてしまうわけですから、多少なりとも「鬱陶しい」「時間の無駄」「広告をスキップはよ」といったネガティブな感情を抱くことがあるのではないでしょうか。

企業は莫大な費用を払って、少しでも多くの人に商品や企業イメージの良さを伝えたいという一心でこれを行っていますが、必ずしもこれを広範に行うということが、個々人にとっての良い印象に繋がるわけではありません。

他方、サポートとはどういうものでしょうか。最初は「せっかく製品を買ったのに、問題があった、どうしてくれるんだ?」という最悪の印象からスタートします。問題が解消しなければ、その悪い印象を拭い去ることは難しいかもしれません。しかしながら、時に何時間、何日といった期間、サポート担当者がその問題に向き合い、要望をしっかり聞いてくれる。この体験を通じて、「この会社、信頼出来るな。今回はちょっと苦労したけど、また次も使ってあげよう。」という気持ちになる。

15秒のCMを我慢できない一方で、トラブルに対して何時間も付き合った結果、この時間のかけ方とはかけ離れた信頼関係に繋がるチャンスがあります。

※「ザッポス伝説」(トニー・シェイ著)という書籍もオススメです。サポートサービスの重要性、サービスを提供する人間の価値について書かれています。ひいては、サポートを提供する人間が「他者を幸福にする」という文化を持つことがいかに大事なのか、というような内容です。

現在、クラウドに限らず多くの業界がサブスクリプション ビジネスです。常に信頼と魅力を伝えていかないといけない中、サポートがどのような役割を担うのかという観点で見るとその重要性が分かります。

マイクロソフトでは、パブリッククラウドの世界一を目指して強烈に力を入れています。クラウドでは、「やーめた!乗り換えよう」が簡単にできる世界です。お客様となる企業は、製品の機能リストを見て比べているわけではなく、信頼を出来る会社かどうかを見ています。「自社のデータを置いてもいいのか?撤退しない?」「自社が使っている機能で問題が出たらさじを投げるのではないか」「お客様のことを見てくれているのか?自分たちに都合がよいように、儲かるものだけを続けて他を捨てるといったことがないか」このような不信感を拭うのは、CMでも現在の華々しい機能リストでもありません。サポート、ひいては「お客様を大事にする文化」です。サポートは、エンジニアとお客様、一対一のやりとりを通じてこれを行います。

本当に困ったとき、トラブったときこそ、人の本性が出るといいます。ここで粘り強く解決に向けて対応ができるかどうかが、そのお客様にとっての最後の砦ということです。

サポートエンジニアで伸びる能力と価値

1. 技術力 - 当然のことながら、特定の製品については内部的なドキュメント、トレーニング資料、データセンターに残るデータ分析、日々様々な角度からのお問い合わせを通じて圧倒的な速度で成長します。マイクロソフトでは、開発部門も多くは Dev&Ops で運用していますので、現在進行形で仕様を把握し判断できる開発部門と問題について協議をすることも出来ます。彼らが、その製品の業界事情などをどのように見ているかが垣間見れる点も面白いところです。

2.問題解決力 – お客様からのお問い合わせは、その文面通り回答すればハッピー、というわけにはいきません。テック、ソフト、両面から問題を聞き混み、どのように力になれるのかということを考えます。マイクロソフトに限らずだと思いますが、メーカーのサポートは、「こうすれば万事OK」というソリューションがない世界です。大小様々な企業で、自社独自の製品の問題をどのように解決していくか、ということを試行錯誤しています。プログラムを書いて新製品を生み出しているわけではありませんが、この世界の誰もがやったことのない、未知の世界で頑張っているわけです。マイクロソフトはそれはもう特に顕著で、「パブリッククラウド特有の問題」「クラウド+オンプレミスの複雑な問題」「インフラ、Windows、OSS、Office等々の異なる製品とそのカルチャーの混在」などなど、うまくいかないことを手探りでやり、お客様にとって今できるベストとは?を考えています。とてもクリエイティブな仕事です。

3.チームワーク – もはや、1人のスーパーエンジニアが何もかも把握している、ということは不可能です。新人でも二ヶ月もすれば、その人しかしらない知識と経験が存在するでしょう。(そもそも、一部の限られた超人がいて、それに頼ったとしても、世界中で急速に成長するクラウドの領域において、スケールするのでしょうか。) このため、チームワークが何よりも大事です。マイクロソフトでは、Swarming (スウォーミング) というオペレーションを促進しており、これは、案件ごとに異なるテクノロジーを担当する複数のエンジニアを招集して、「問題解決チーム」を作りましょう、という文化であり仕組みです。このため、案件のオーナーは、知らない領域であっても、その問題にヘルプになる人間を集めるというリーダーシップをとる練習になりますし、何より、広域な問題について打ち込むという経験を積めるということになります。サポートエンジニアとして、特定の製品群に詳しいけども、さらに未知の様々な製品が関連した問題にもアプローチが出来るようになる、ということです。

4.個人の価値と認知度 – サポートエンジニアの仕事の多くは、日々お客様の困りごとを解決することです。しかしながら、今後は、個人としての価値も上げていく時代です。積み上げてきたナレッジを基に、情報を発信する (本を書く・イベントで登壇する)、社内外でコミュニティを築く、といったことに目を向けると、個人としての価値もより有形になってくるでしょう。

5.英語力 - 外資系企業の場合、日々、開発部門との連携において英語でやりとりをします。多くは読み書きでなんとかなりますが、興味があれば Teams で電話をしてみてもよいでしょう。かつて、外資系企業では、ミーティングで発言をしない参加者は無価値である、といった事が言われていましたが、今は時代が変わっています。Diversity & Inclusion (D&I) といった言葉がありますが、これはいわゆる女性採用に限らず、様々な文化圏、価値観がある人を尊重し、全員の意見を漏らさないようにしましょうということです。このため、特に社内の英語のオンライン会議では、「What else?(他には?)」というキーワードが飛び出し、完全な沈黙が続かない限り誰かがしゃべるタイミングを設けるということが増えてきました。ミーティングの後「英語が早くてしゃべりにくかったでしょ?後でメールしてもらったら、私が代わりに皆に伝えておくよ」といった個別の声がかかることがあります。技術的なやりとりでは、画面を共有して「THIS! THIS!ストレンジ!エラー!」と叫び続けることでなんとか相手に問題を伝えたらなんとかなるということも。相手も同じチームなわけですから、「これはまずい問題がおきているな。こっちで人をかきあつめて直しておくから、アップデートを待っててくれよ。」という感じで、オーナーシップを引き取ってくれることも。世界のエンジニアと協力して、お客様の問題が解決できたとしたら、カッコよすぎませんか?たぶんその日はスキップして家に帰ると思います。

最後に、サポートエンジニアそれぞれの心の持ち方も重要です。一部では、「過去にやったことのある、既知の問題について対応する案件はつまらなく飽きてしまう」という声を聞きます。程度の問題ではありますが、私はそうは思いません。あらゆるお客様について、腑に落ちていない点や、それを踏まえた説明の仕方は異なります。サポートエンジニアは、(少なくともマイクロソフトでは) 技術的な回答をすることは必要最低限の仕事であり、その先にある信頼の獲得がゴールです。お客様ごとに異なる特徴と、コミュニケーションにおける差が必ずあり、それに真摯に向き合った先には必ず自分、ひいては組織の成長があるはずです。

転職: サポートエンジニア → 他社のサポートエンジニア

同じサポートエンジニアという業務形態はそのままで、他の会社にいく必要性、これは3つほど理由があります。

サポートに脚光があたり、投資がしっかりしている「報われる職場」を選ぶ

既にサポートエンジニア職についている技術者が、他のサポートエンジニア職に応募するとしたら、やはりサポートに脚光があたり、投資がしっかりしている所を探すのがよいでしょう。業界としてスポットライトが当たっている、口コミ、色々とあると思います。 サポート業務は、時と場合によっては「コストセンター」という扱いになります。新製品を開発し、販売するというプロフィット (利益) センターに対して、コストがかかるだけの組織、という見方ですね。そうなると、コストカットとなると少ない人員で、より短い解決時間でといった余計な達成目標が設定されてしまいます。コストとは非常にアンフェアな言い方だと思います。営業だってプログラマーだってコストは生じているでしょうに、会社によっては一部の組織に対してのみ、そう認識されてしまうようです。マイクロソフトも、私が入社した12年前はそう呼んでいましたが、カスタマーサービスの重要性に気付いてからはめっきりそのような呼ばれ方はしなくなりました。今や、製品の印象や将来を担う重要なドライバーという位置づけです。

サポートの声を会社として聞く気があるのか、ということにも繋がります。お客様の声を、よかれと思って開発部門に伝えて、それが反映されるかどうか。

是非、サポートエンジニアが輝ける職場を求められることをお勧めします。そして、今そういう場所にいるよ、という方は、あらためてその価値を再認識してほしいです。

成長ができる企業文化を選ぶ

無駄なルールが無い合理性、人間としての成長、お互い尊敬をしあえる仲間、お客様や仲間の成功を喜ぶ、そういったものは、共通の価値観となる企業文化にて醸成されるものです。多くの企業がそういった素晴らしい企業文化を持っていると思いますが、そういった根本的な価値観 (コア バリュー) に変化を持たせるという観点で転職してみることも良いかもしれません。

マイクロソフトでは、「Growth Mindset(成長する考え方)」を根幹においてます。前述のとおり、世界最大規模のクラウドの構築・運用・サポート・営業、全てにおいて、手探りであり、今の時点での正解はありません。常に「あれがないこれがない」という世界で、成長に繋げられるようにという思いがあります。また、様々な部署・国・価値観によって構成される人間が手をとりあって成功に繋げられるよう、「お客様」を共通のキーワードにしています。外資ですが、なんとなくイメージされるような激しい競争、ライバルとの蹴落としあい、といったものとは正反対の文化です。

スキルが伸びる職場を選ぶ

ソフトスキル、技術スキル問わず、成長が行き詰まるということは、エンジニアを続ける上で危険信号です。日々、何かを覚えて成長したなという実感がありますか。無ければ、次のステージに行くきっかけかもしれません。

「決まったマニュアルを試したらすぐにバックエンド部隊に投げる」「深い調査権限を持たせてもらえない」このあたりに不満がある場合に、現職にて解決策が無いのであれば、是非外にも目を向けてみてください。

転職: 他の技術職 → サポートエンジニア

前述のサポートエンジニア → 他社のサポートエンジニアの部分とも多くが共通します。加えるなら、他業種からのサポートエンジニアへの転向は、結局のところ、技術者である前に、「目の前で困っている人がいたら助けたいか」に興味が持てなければなりません。その点を除いては、おそらく IT 関係の技術職でしっかり研鑽を積んできたのであれば活躍できるでしょう。

さらに、「サポートエンジニアで伸びる能力と価値」の項に記載した領域に興味があれば、それは立派な「次のキャリアステップ」になります。

キャリアプラン - サポートからさらに先の転職

サポートエンジニアとして、日々お客様の声を聞き、チームワークと技術力を発揮して解決する。それまでに身を置いてきた現場がチャレンジングであればあるほど、このスキルセットにかけ算で魅力が追加されるでしょう。

アーキテクトやプリセールス ロールに行って重宝されたという話も聞きます。お客様の目線や問題を抑止したいという目線も持ちうる開発者になる人もいます。

お客様の環境での Good / Bad Example を沢山目にしますから、SIer としてのさらに高度なロールにいくことも可能でしょう。

マイクロソフトでも、広範にわたる役職があります。営業職・データセンター運営・開発職・アカウントマネージャー・管理職・他の製品のサポートetc。マイクロソフトは幸い、会社自体が「Customer Obsession」(顧客への執着) というほどのお客様志向をかかげていますから、サポート出身者でこのマインドで負けることはありません。

補足: マイクロソフトでは面接で何を見るか

マイクロソフトでは、Growth Mindset (成長する考え方) というものを尊重しています。今できることをやるのではなく、今できないことについてどのようにして出来るようになるのか、そのアプローチ努力して継続し、効果的にプランすることが重要です。

面接でも、経験やスキルセットも見るには見るのですが、どちらかというと我々が知りたいのは「この人は、知らないことについてどのようにアプローチして、身につけるのだろう?(これまで身につけてきたのだろう?)」ということです。Azure のように、年間何十という機能追加や変更が行われる世界では、今持っているものだけではその人の適性は図れません。(前述のように、お客様はクラウドという製品を買うのではなく、信頼性を買うのだ、というのとちょっと似ていますね)

また、こう言ってしまうとなんですが、私達、特にエンジニアが面接する場合、彼らは面接という技術のプロではありません。ですので、面接中の質問に対して答えを持っていない場合も、是非、臆さず双方向にコミュニケーションを取ってみてください。

「何故そのような質問をするのでしょうか」と深掘りをしてみましょう。

面接官となるエンジニアも、おそらく技術力をみたい、その一心だと思います。質問には直接わからないけど、それに近い何かを深く追求したことに自信があれば、そちらに誘導してみてもよいでしょう。その質問をしているのがお客様だったとしたら?「分からないです、すいません・・・」と暗い雰囲気で終わらせるのではなく、建設的な、未来を向いたアプローチがあるはずです。

「その技術について直接はわからないけど、○○という情報を参照することで答えられます。」「私の知識の中で、類似するこういうものがあり、それに近い考え方だとすると~」といった会話を極力繋いでみましょう。

宣伝: マイクロソフトのサポートエンジニア募集中

現在、マイクロソフトのサポート職を募集しています。この項、あるいは私の LinkedIn では、募集要項や採用イベントがありましたらお伝えしていきます。

私のチームでは、Azure の Networking 分野で募集しています。IaaS/インフラ/ネットワークあたりのキーワードが刺さる方は是非ご検討下さい。

Support Escalation Engineer - Azure Networking (複数枠有り!) https://careers.microsoft.com/i/us/en/job/715208/Support-Escalation-Engineer-Azure-Networking

他にも、様々なエリアで募集がありますので、もし興味がありましたら、是非「石井の LinkedIn を見たよ」と記載下さい。直接のご相談も Welcome です。

私のチームに限らず、マイクロソフトのサポートとして、少しでもチャンスに繋げられるようご協力させていただきます。

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