以下に口頭試問や公聴会に向けてスライドを作成する際に気をつけるべきことをまとめます. 研究室の報告会では似た研究テーマに取り組んでいたり自分の進捗を年単位でフォローしてくれている人に向けての発表なのである程度言葉足らずでも伝わりますが,試問や公聴会では 自分の研究テーマ(分野)の専門家ではなかったり自分の発表を初めて聞く 先生方や聴衆に内容を理解してもらう必要があるので,いつも以上に丁寧にスライドを作り込む必要があります. このリストを有効活用して分かりやすいスライドを作ってください. 同級生や先輩,後輩にチェックしてもらうのもよいと思います. また,卒論/修論用の自己チェックリストの内容も参考にしてください.
- 一番主張したい結果を決める.
- それに合わせて発表のストーリーを考える.
- 1つのメッセージ/トピックを1枚のスライドに割り振り,全体の構成を決める.
- 例:スライド1枚につき理解してほしい図を1つ載せる.
- スライド枚数は(基本的に)1分/1枚だが,試問や公聴会は時間が短いのでより多くなってもよい.ただし,その分スライドの構成にはじゅうぶん注意する.
- 「この人のスライド見やすいな」と思う相手にどんな工夫をしているかを聞いてみる
- スライドのアスペクト比を適切に決める.
- 16×9か4×3.いまは16×9が標準(?)
- 発表会場のプロジェクタに合わせればよい.
- シンプルなテンプレート/スタイルを選択する.
- 背景に柄や模様が入ったものはノイズになるので避ける.
- Powerpointならスライドマスターを調整し,Beamerなら
\usetheme, \usecolortheme, \usefonttheme, \setbeamertemplate, \setbeamerfont
などを適切に設定する. - スペース記号や改行などでデザインせず,適切なテンプレートをもちいる.
- フッターやヘッダーに対応する論文の章/節を表示するなども有効です.
- ページ番号を載せる.
- 現在のページ番号/本文の総ページ番号とする.
- 補遺スライドは本文の総ページ番号を超えてナンバリングする.
- 発表で使うスライドが大量にあると誤解されないため.
- スライド中で使う色やフォントサイズ,文字の装飾を決めておく.
- 例えば強調する内容はこの色/フォント/太字or斜体...を使うと決めておき,スライド全体で統一する.
- 色数を使いすぎない(メイン/強調/発展やコメントで3色程度).
- フォントはゴシック系とする.
- フォントサイズは自分のPCでみて「大きすぎるかな?」と思うくらいでよい.
- 人によってみえづらい色使いになっていない.
- Mac/iOSならSim Daltonismというアプリで見え方を確認できる.
- 各スライドにその内容を要約したタイトルをつける.
- 「手法」や「結果」のようなタイトルが何枚も続くようならより詳細な(各スライドにあった)タイトルをつける.
- おすすめのフォント
- 吉井くん:Macならヒラギノ角ゴシック(日本語)+Helvetica(英語)
- 吉井くん:Windowsならメイリオ(日本語)+SegoeUI(英語)
- [TBA] おすすめのフォントサイズ
- タイトル/本文/図表のキャプション
- [TBA] おすすめのカラーテーマ
- BeamerならBeamer theme galleryから好きなものを選べばよい.
- 他にも,例えばThe Ultimate Beamer Theme ListやLaTeX Beamerの"Beamerらしく"ないおすすめテーマ集にいろいろ載っている.
以下の項目が間違いなく記述されている.
- 論文のタイトル
- 氏名と所属
- 試問や公聴会の名前と日付
- [?] 目次を載せるなら,タイトルの次ではなく各節を切り替えるときに載せる.
- 例:白紙のスライドの中央に今から議論する節のタイトルのみを載せ,展開をわかりやすくする.
- 例:全体の目次を載せ,今から議論する節のタイトルを強調して全体の流れをわかりやすくする.
- 一般的な内容からはじめ,専門的な内容に移る.
- 図や写真を効果的に使うとよい.
- いくつかの重要な先行研究を紹介する.
- 発表を通じて使う略語や方程式を定義する.
- 研究目的を明確に示す.
- 自分で実装したコード/設計や組立をした装置をアピールする.
- 模式図を効果的に使う.
- (数値計算)一般的な(聴衆がだいたい知っているような)手法との差を伝える.
- (実験)実験装置のサイズ感を伝える.
- 先行研究との整合性を明確に伝える.
- その上で自身の研究で明らかにしたことを伝える.
- 論文に載せた全ての結果ではなく,明確なストーリーを作り重要な結果をそれに沿って発表する.
- 研究のモチベーション/手法/結果/結果の意義や将来の発展を一枚にまとめたスライドで発表を終わる.
- 「ご清聴ありがとうございました」スライドは 絶対に 使わない.
- 報告会や昔の学会発表などで作ったスライドを付け足しておく.
- ただし,何でもかんでも載せてしまうと枚数が膨大になり質問をうけても探し出せなくなってしまうため,適切に取捨選択する.
- 古いスライドを載せる場合,最新の結果やnotationと整合しているかを確認する.
- 例えば論文と違う変数で同じ量を示しているような図を使わない.
- 基本的に図表番号はつけない.
- ラベルは論文より大きくする.
- 軸のラベルには変数だけでなくその意味も書く.
- 例:「$k$」のみではなく「$k$ 波数」のようにする.
- パラメータ依存性などを矢印や枠線で示し,注目すべき箇所をハイライトする.
- self_checklist.md:図表も参照する.
- 基本的に式番号はつけない.
- 複雑な/長い数式には注釈をつける.
- 例:各項の下に物理的意味を書く.
- 例:各項に背景色をつけ,本文中に同じ色で説明をつける.
- 背景色はフォントの色を変えるより見やすいと思う.
- 例:打ち消す/ネグる項には打ち消し線をつけたり色を薄くする.
- self_checklist.md:数式も参照する.
- 出版された論文を参照する.
- 基本的に先輩の修論などは参照しない.
- 番号ではなく[Araki 2021]や[Araki, PRF (2021)]のようにそれだけを見て文献が(ある程度)分かるものをつかう.
- 参考文献をリストしたスライドは作ってもよいが,最後に見せるのは「まとめ」スライドとする.
- 田崎 晴明,発表スライドについての基本的なルール
- スライドづくりで気をつけるべき点が簡潔にまとまっているので読んでおきましょう.
- 上田 隆一,論文、スライド、プレゼンのチェックリスト
- スライドづくりだけでなく発表のコツも載っているので参考になります.
- Akimasa Morihata,良い発表をするために
- 非常に充実したページで,スライド作成時に気をつけることのみならず作り始める前に考えておくべきことや発表練習などについてもまとまっています.