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KobayashiToshi authored Aug 2, 2024
1 parent abb98ec commit 39e236a
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# 5 段落の組版処理

## 5.1 行そろえの方法の選択

日本語組版では,行長を字幅の整数倍に設定し,特に縦組では多くの行で,行の過不足は発生しないということもあり,通常は行頭・行末そろえ((justification))を選択していた.

ラテン文字やアラビア数字の使用も多く場合など,行頭・行末そろえではなく,次のような行頭そろえなど,他の方法も選択されている.

- 行頭そろえ

- 中央そろえ

- 行末そろえ

- 千鳥組

## 5.2 段落の示し方

段落は,1つ又は複数の文をまとめ,意味のまとまりを示す.そこで,読んでいく際に段落としてのまとまり(区別)を示すようにする.

段落を示す場合,以下の3つの方法がある.

- 段落ごとに行を改め(改行),さらに段落先頭行の行頭を全幅の1倍下げる方法.

- 段落ごとに行を改め(改行),さらに段落の間を,その段落の行間より広げる方法.

- 段落ごとに行を改め(改行)ないで,段落の間に記号を挿入する.一般に“/”(U+FF0F)に使用している例が多い.引用する際などに使用されている.

注 1行アキとは,ドキュメントの先頭・末尾を除き,行間を次の大きさにすることである.

文字サイズ(行送り方向のボディのサイズ)+行間×2

### 5.2.1 段落先頭行の行頭を全幅下げる方法

段落先頭行の行頭を全幅下げる方法には,行頭に和字間隔(U+3000)を入力する方法と書式で設定する方法がある.和字間隔を入力する方法は,書式を変更する際にやや手間がかかり,また,和字間隔の直後(段落先頭行の先頭)に括弧類がくると,行の調整処理でアキが変わる可能性があり,避けた方が望ましい.

なお,段落先頭行の行頭を全角下ガリとする方針であっても,段落先頭行の行頭を全角下ガリとしない次のような例がある.

- 英語にならって,ドキュメントの先頭及び見出し直後の段落に限り字下げしない.

- 別行にした引用,あるいは別行にした数式・化学式の直後の行を改めた先頭行の行頭は字下げしない.“とあり……”“となり……”のように前の引用や数式・化学式に文は続いているという解釈で字下げしない.ただし,改行であるとして,全角下ガリとする方法も行われている.

### 5.2.2 段落の間を広げる方法

段落の間を広げる場合,次の2つの方法がある.

- 1行分を確保する(1行アキ)にする.

- 段落の間を書式の指定で広げる.

1行アキは,処理が簡単である,さらに段落の間を広げる機能がない場合に利用されている.

注 印刷物でページを構成する場合,行送り方向の長さもそろえていた(行の調整処理と似た処理が必要).そこで,行送り方向の長さに行を単位に空けると過不足がでないことから1行アキが選択されていた.Web等では,その必要はない.

段落の行間より広げる場合は,行間などとのバランスを考慮し,例えば,次のようにするとよい.

- 行間の2倍にする

- 行間に文字サイズを追加する

- 1行アキの半分にする

注 1行アキの半分にする 1行アキの半分にするにするとは,ドキュメントの先頭を除き,行間を次の広さにすることである.
 行間+(文字サイズ+行間)/2

## 5.3 段落の行長

### 5.3.1 行長の設定方法

行長の設定方法としては,次の2つがある.

1 そこに使用する文字サイスの全幅の整数倍に設定する.つまり,行長を1行に配置する文字数で決める.そこで,この方法では行長を何字詰めという字数で形式で示すことが多い.以下でも字数で説明する.

注 全幅の整数倍に設定するのは,行の調整処理がでないようにするためである(〓項参照)

2 そこに使用する文字サイズに関係ない単位で設定する.

### 5.3.2 望ましい行長

行長は読みやすさに影響する.極端に短い行長は,行末から行頭への移動回数が多くなり,また,単語が分割されることが多くなり,読みやすさが損なわれる.また,極端に長い行長は,行末から行頭に移動する距離が長くなり,また,途中で読みとどまるケースの頻度も増える.このように読みとどまる際には,位置があいまいになり,読みやすさを損なう恐れがある.

その文書の目的,デザイン上の工夫で行長は変わってくる.ここでは,最短の字詰め数と最長の字詰め数について,簡単に触れておく.

1 最短の字詰め数

新聞では11字,あるいは12字としている例がある.書籍では,図版等を配置する際に図版等の字詰め方向のサイズにより,縦組では図版等の天地,横組では図版等の左右に文字を配置することがある(回り込みという).この回り込みの字数が10字以下の場合は,回り込みを行わないで空けておく方がよいと言われている.

こうした事情から考えると,最短の字詰め数は,10字前後となろう.

2 最長の字詰め数

ここでは,書籍でよく見掛ける例を示す.

- A5,縦組1段組:52字くらい(主に専門書)

- B6,縦組1段組:40字から43字くらい(小説など)

- A5,縦組2段組:25字くらい

- A5,横組1段組:35字くらい

- B5,横組2段組:22字くらい

こうした例を見ると50字くらいまでは考えられるが,こうした例は専門書であり,小説などでは40字くらいで,小説で52字とする例は少ない(小説をA5で刊行する場合,文字サイズを大きくして,字詰め数を少なくしている).横組でも,読みやすいのは30字から35字くらいであるともいわれていた.

注 書籍の仕上りサイズは以下である.

A5 縦:148 mm,横:210 mm

B6 縦:128 mm,横:182 mm

B5 縦:182 mm,横:257 mm

ただし,実際に刊行されている小説はB6ではなく,四六判(縦がB6より6mmほど大きい)が採用されている例が多い.

こうした事情を考慮すれば,最長の字詰め数は50字も考えられるが,40字くらであると考えた方がよいであろう.特に横組では,35字程度に止めておいた方がよいであろう.

## 5.4 段落の行間

### 5.4.1 行間の設定

字詰め方向の字間は,通常は文字のボディを密着させて配置していけばよい.これに対し,行送り方向の行間は,そのドキュメントの目的,内容,表示の方法,さらに読者などにより異なってくる.それぞれのドキュメントに応じて,何らかの値を設定しないといけない.また,行間の大きさは読みやすさに大きく影響する.ここでは,どのような行間は望ましいのか,まとめてみた.

なお,ラテン文字には,デッセンダーとアッセンダーがあるが,日本語組版に使用する漢字や仮名にはデッセンダーもアッセンダーはない.したがって,ラテン文字を主にしたテキストと漢字や仮名を主にしたテキストでは,行間は大きく異なる.ラテン文字を主にしたものに比べ,日本語組版では行間を広くとる必要がある.さらに,行間の選択の幅も大きい.全幅の1倍から1/4の範囲で設定する例が多い.

注 行間をゼロ ラテン文字を主にしたテキストでは,行間をゼロにすることも可能である.これに対し,漢字や仮名を主にしたテキストでは,行間をゼロにするケースは,2行で示す文中に挿入される割注など,その例は限られている.

### 5.4.2 行間を決める際に考慮する事項

行間は決める際には,以下のような事項を考慮するとよい.

- 1行の行長:行長が長いと次行の行頭への移動に負担がかかるので,それに応じて行間を広げるのが望ましい.行長が短い場合は,読んでいく際に,行末から行頭に移動する距離が短く,また,途中で読みとどまるケースも少ないので,ある程度は行間は狭くできる.これに対し,行長が長い場合は,読んでいく際に,行末から行頭に移動する距離が長くなり,また,途中で読みとどまるケースの頻度も増え,読んでいる箇所でとまどいがでないように(隣の行との行間が狭いと,隣の行に視線がいくケースもある),ある程度は行間を広くしておく必要がある.

- 使用するフォントの字面の大きさ:文字の字面のボディに対する平均的な大きさはフォントにより異なる.ボディ一杯にデザインされているフォントもあれば,いくらか余白をもったフォントもある.字面の大きいフォントの場合は,通常は行間を広くするが,視覚的な字間は狭くなるので,それとのバランスを考慮すると,ある程度は狭めることも可能になる.

- 字間を詰めて配置した場合,行間はいくらか狭める処理が可能になる.逆に字間を空ければ,行間も広くする必要がある.

- そのテキストの長さはどれくらいか.特に長いテキストで,読むことを重視するのであれば,読みやすさを第一に考慮しないといけない.短いテキストであれば,多少の読みにくさは問題にならない場合もあり,ある程度は行間を狭めてよい.

注 短い文章の行間 短い文章は,短時間で読んでしまえるので,少々のことは我慢できる.辞典などでは,小さい文字サイズを使用し,行間も狭くする例が多いが,読むことは可能である.読みやすさの評価は,一度に読む文章の量も影響する.

- 表示する文章の量:一つの画面で一度に見えるように,ある程度のまとまった量を表示する必要がある場合がある.読んでいる箇所の前又は後ろにある程度のテキストを表示した方がよいケースもある.この場合は,文字サイズの調整と合せて行間でも調整できる.

- 複数行になる見出し,複数行になる図版のキャプションなど,そのテキストがまとまりとして読まれるものがある.こうしたテキストでは,ある程度は行間を狭くした方が一体性を保つことができる.

注 表のヘッダーなど 表のヘッダーなど,一部のテキストだけ長く,複数行になり,他とのバランスを壊す場合,2行程度であれば,行間をゼロにしてよい.

- 行中に配置される要素の大きさ:行中に,その段落に適用されている文字サイズより大きな文字やその他の要素が入っていないか.こうした要素がある場合,前後の行と重ならないように,行間を決める必要がある.

- 行間に配置する要素:ルビや注番号など,行間に配置するものはないか.こうした要素の考慮して,行間を決める必要がある.

- 文字サイズ:表示される際の文字サイズは,どのくらいか.表示される文字サイズが大きくなれば,ある程度は行間は狭めることができる.

- 読者:読者にはどんな人が予想されるか:読者によっては,広い行間を求める人もいるので,こうしたことを考慮して,行間を決める必要がある.また,アクセシビリティへの対応として,特別に広い読者もいるので,読者が行間を変更できる仕組みが必要になる.

### 5.〓.3 行間の選択方法の例

行間の選択に際して,使用している文字のサイズ又は行送り方向の文字のボディの大きさを基準に,その1/2をスタートに考える方法がある.

行長が,ある程度長い場合など,行間を広げる必要がある場合,文字のサイズ又は行送り方向の文字の外枠(ボディ)のサイズの1/2より,さらに広げる.特別な事情がない限りは,最大でも1倍程度であろう.行長が短い場合では,通常は1/2程度に止めておく.

スペースに限界がある,キャプションや見出しのように,そのテキストがブロック(固まり)として認識されるとよい,といったケースでは,文字のサイズの又は行送り方向の文字の外枠(ボディ)のサイズの1/3,あるいは1/4にするとよい.

注 行中に大きな要素は入り場合 行中に大きな文字サイズの文字・インライングラフィック,水平線のあるやぐら組の分数を挿入する,あるいはルビ等が付く場合,隣の行に掛かるケースもある.この場合は行間を広げる必要がある.行間を広げる方法としては2つある.

1 行間へのはみ出しがある行,ルビ等の付く行について,その段落で設定した行間に基づいて,整数倍の行の占める区域(行取りという)に拡大する.例えば,2行分の区域(2行ドリ)にする.この方法では,行間を広げた行に続く行の位置は,その段落で設定した行位置になる.

2 はみ出しが隣の行に重ならないように行間を広げるが,広げる大きさは行取りではなく,隣の行との間に設定された最低のアキを確保するように行間を広げる.この場合は,行間を広げた行に続く行の位置は,その段落で設定した行位置にならない.
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